ポッドキャストの音声を書き出すときに、少し迷うもののひとつが音量です。
音が小さいと、聞く人がボリュームを上げないといけない。 反対に、大きくしすぎると、声が詰まったように聞こえたり、ところどころ歪んだりします。
音声編集の画面には、LUFS、ラウドネス、True Peak、dBTPなど、急に専門用語が出てきます。最初は、この時点で少し距離を感じます。
でも、ポッドキャストの会話音声なら、まず見るところはそれほど多くありません。
このブログでは以前にも、ポッドキャストの音量やラウドネスについて書きました。 ただ、当時の記事には2022年時点の情報や、自分で検証していたときの書き方が残っています。
今あらためて、Apple Podcasts、PRX、Spotifyなどの情報を見直して、ポッドキャストを始める人が迷いにくい形に整理しておきます。
先に結論を書くと、普通のポッドキャストなら次を目安にすると扱いやすいです。
- ステレオ配信: -16 LUFS前後
- モノラル配信: -19 LUFS前後
- True Peak: -1 dBTP以下。余裕を見るなら-1.5から-2 dBTPくらい
- 毎回のエピソードで、なるべく同じ音量感にする
細かい理屈はあとで大丈夫です。 まずは「ステレオなら-16 LUFS、True Peakは-1 dBTP以下」と覚えておくと、配信前の迷いがかなり減ります。
LUFSとは?ポッドキャストの「聞こえる音量」を見る数字
LUFSは、ざっくり言うと「人の耳でどれくらい大きく聞こえるか」に近づけて測るための数字です。
音声編集では、波形の大きさやピーク音量を見ることがあります。けれど、瞬間的に大きい音があるかどうかと、全体として聞きやすい音量かどうかは、少し別の話です。
たとえば、拍手や笑い声が一瞬だけ大きく入っている音声と、話し声そのものがずっと大きい音声では、聞いているときの疲れ方が違います。
LUFSは、そういう「全体としてどう聞こえるか」を見るためのものです。
ポッドキャストでは、特に Integrated Loudness、つまり音声全体の平均的なラウドネスを見ることが多いです。編集ソフトやラウドネスメーターで「Integrated」や「統合ラウドネス」と表示されているものが、それに近い項目です。
ポッドキャストの音量はなぜ-16 LUFSが目安なのか
Apple Podcastsは、音声全体のラウドネスを-16 dB LKFS前後、許容幅はプラスマイナス1 dB、True Peakは-1 dB FSを超えないようにすることを推奨しています。
LKFSとLUFSは、ここではほぼ同じものとして考えて大丈夫です。言い方が違うだけで、ポッドキャストの音量調整では「-16 LUFS前後」と受け取って問題ありません。
だから、ステレオのポッドキャストを作るなら、まずは-16 LUFSを目標にするのが扱いやすいです。
もちろん、すべての配信先がまったく同じ基準を持っているわけではありません。PRXは、ポッドキャスト音声について-16から-19 LUFSの範囲をすすめています。
実務では、ステレオなら-16 LUFS、モノラルなら-19 LUFSという使い分けがよく出てきます。
True Peakとは?配信後の音割れを防ぐための余白
LUFSが全体の聞こえ方を見る数字だとすると、True Peakは「瞬間的にどこまで大きくなっているか」を見る数字です。
ここで気をつけたいのは、編集ソフト上では大丈夫そうに見えても、MP3やAACに変換したあとで、音が歪むことがある点です。
ポッドキャストは、最終的にMP3やAACで配信することが多いです。圧縮する過程で、波形のサンプルとサンプルの間にあるピークが問題になることがあります。
なので、True Peakは0 dBぎりぎりを狙わないほうが安心です。
目安としては、次くらいで見ておくと扱いやすいです。
- 最低限: -1 dBTP以下
- 安全側: -1.5から-2 dBTP以下
数字だけ見ると小さな差に見えますが、配信後の歪みを避けるための余白として効いてきます。
Spotifyの-14 LUFSとポッドキャストの-16 LUFSの違い
音量の話を調べていると、Spotifyの-14 LUFSという数字も見かけます。
Spotifyは、音楽のラウドネス正規化について、再生時に-14 dB LUFSへそろえると説明しています。音楽配信やマスタリングの話では、この数字がよく出てきます。
ただ、ポッドキャストの会話音声を作るときに、Spotifyだけを見て-14 LUFSへ合わせる必要はないと思います。
理由は、ポッドキャストはSpotifyだけで聞かれるとは限らないからです。Apple Podcasts、Amazon Music、YouTube、LISTEN、RSS対応アプリなど、いろいろな場所へ同じ音声を届けることがあります。
会話中心の音声で-14 LUFSを狙うと、圧縮を強めにかけたくなることもあります。そうすると、声の自然な強弱が減ったり、長く聞くと少し疲れやすくなったりします。
音楽のように迫力を出すことより、ポッドキャストでは聞き手が音量を変えずに、最後まで自然に聴けることのほうが大事です。
だから、会話中心のポッドキャストなら、まずは-16 LUFSを基準にしておくのが無難です。
初心者がまず確認したいポッドキャスト音量設定
音声編集に慣れていないうちは、たくさんの数字を一度に見ようとしなくて大丈夫です。
まずは、書き出し前に次の3つだけ確認します。
1. Integrated Loudnessが-16 LUFS前後になっているか 2. True Peakが-1 dBTP以下になっているか 3. 前回のエピソードと比べて、声の大きさが極端に違わないか
これだけでも、聞き手が音量ボタンを何度も触るような状態はかなり避けられます。
もう少し余裕が出てきたら、LRA、つまりLoudness Rangeも見てみます。これは音量の起伏の大きさです。
会話中心のポッドキャストなら、極端に広げすぎないほうが聞きやすくなります。目安としては、5から10 LUくらいに収まっていると扱いやすいことが多いです。
ただし、これは絶対の数字ではありません。屋外収録、対談、朗読、環境音が多い回など、内容によって自然な起伏は変わります。
ラウドネスは音を大きくするためではなく、聴きやすくそろえるための基準
ラウドネスの数字を見ると、つい「もっと大きくしたほうがよいのかな」と考えたくなります。
でも、LUFSは音を大きくするためだけの数字ではありません。
どちらかというと、毎回の音量感をそろえるためのものです。
前回は小さかった。今回は急に大きい。次の回はまた小さい。 そうなると、聞く人は毎回ボリュームを触ることになります。
通勤中に聞いている人もいます。家事をしながら聞いている人もいます。寝る前に小さめの音で聞いている人もいます。
そのたびに音量を上げ下げしなくていい。 それだけで、ポッドキャストはかなり聞きやすくなります。
まずは-16 LUFSで書き出してみる
最後に、実際の設定だけまとめておきます。
ステレオで配信するポッドキャストなら、まずはこのあたりです。
- Integrated Loudness: -16 LUFS
- 許容範囲: -17から-15 LUFS
- True Peak: -1 dBTP以下
- 安全側にするなら: -1.5から-2 dBTP以下
モノラルMP3やモノラルAACで配信するなら、少し下げて考えます。
- Integrated Loudness: -19 LUFS前後
- True Peak: -1から-2 dBTP以下
ここまで整えておけば、まずは十分です。
大事なのは、毎回同じくらいの声の大きさで届くこと。 そして、聞いている人が音量ボタンを触らずに、そのまま話の中へ入っていけることです。
ラウドネスは、音声を立派に見せるための専門用語ではなく、聞く人の手間を少し減らすための目安です。
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